2024.12.14 Sat 2024.12.16
社会保険強制加入!?理由と推察
106万円の壁がついに崩壊
106万円の壁が撤廃される厚生年金の新ルールで200万人が受けるのは恩恵か影響か
「年収106万円の壁」として知られる厚生年金の加入条件が変わります!厚生労働省は、最低賃金の上昇でこの条件の必要性が薄れたと判断し、条件を撤廃することを決定しました。
これにより、多くのパート勤務の方が厚生年金に加入しやすくなります。
メリットとしては10年以上の加入で、老齢基礎年金しか受給できない方は、老齢厚生年金も受け取れるようになります。
また扶養家族がいる方は国民健康保険から社会保険への切り替えにより、健康保険料を軽減できる場合があります。
デメリットとしては、従来の第3号被保険者ではなくなるため、世帯の収入源である会社員や公務員の社会保険料の扶養家族分の恩恵が皆無になってしまうことです。
現行では、厚生年金に加入するには、51人以上の企業で働き、週20時間以上勤務し、年収が106万円を超える必要がありました。
しかし、2026年10月から、この賃金要件が撤廃されます。
さらに、2027年10月には企業規模による制約がなくなり、週20時間以上働くすべての人が厚生年金に加入可能に。そして、2029年10月からは、5人以上の個人事業所でも適用される予定です。
これは、個人の自営業者であっても5人以上所定の賃金を支払いをしている場合は、実質的に全員社会保険への強制加入が義務付けられることになります。
この見直しにより、約200万人が新たに厚生年金に加入できると予想されています。
厚生労働省は、低所得労働者に保険料負担が重くならないよう配慮する方針も示しており、従来の労使折半ではなく、事業主側が多く社会保険料を負担するような制度設計を計画しているようです。
社会保険制度の歴史
- 日本の医療保険制度はこうして始まった!知られざる全国民保険への道のり
1957年、日本は全員が健康保険に加入する「国民皆保険計画」をスタートしました。
この計画では、保険未加入者を対象にした国民健康保険の全国普及を四年間で完了させることが目標でした。しかし、大都市では計画がスムーズには進みませんでした。資格認定の難しさや、事務費の国庫補助が足りず、大都市の財政に負担がかかったためです。
そこで1958年には、健康保険をより強化するための「新国民健康保険法」案が提出されました。
この法案には、1961年までに全国の市町村での実施義務付けや、給付内容の強化が盛り込まれていました。
そして、この法案は翌年から施行されました。サラリーマン人口が増える中、日本の健康保険制度は力強く前進しました。
最終的に、東京23区を含む各都市でも計画通り実施され、1961年には全員が健康保険に加入する体制が実現しました。
この日本の国民皆保険制度は、その後も多くの国で参考にされています。
皆保険制度は素晴らしい制度だけど…
社会保険加入条件
社会保険の加入義務条件は近年急速に条件が変更されています。
2024年10月の社会保険の加入条件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金が月額8.8万円以上
- 雇用期間の見込みが2ヶ月超
- 学生ではない
- 企業の従業員数が51人以上
上記は、2030年までに週の所定労働時間の制限以外は、ほぼ廃止されることが決っており、学生は特定扶養控除などの関係で対象外となっているが、130万円を超えると扶養から外れることになってしまい、実質的に年間27万円ほどの余白はあるものの、それを超えれば扶養から外れ、一般の賃金労働者として社会保険に独立して加入させられることになる。
その場合は扶養者の所得税に関しても学生に対する扶養控除がなくなるので、注意が必要だ。
ちなみに、雇用保険に関しては、
雇用保険の加入条件
- 31日以上働く見込みがあること
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
となっている。
社会保険は厚生年金とセットになっている
社会保険加入の地域格差
地域別最低賃金時間額の最高額は東京都の1,163円、最低時給が秋田県の951円で、時給換算すると200円以上の差があります。
さらに現在の最低賃金の時間額をもとに算出すると、就労地域によっては社会保険加入条件の月額賃金を超えてしまう場合と超えない場合がある。
東京都で月間87時間仕事をすると1ヵ月最低101,181円、秋田県では1ヵ月最低82,737円と、同じ時間はたらいても18%ほど賃金格差が生じます。
最低賃金の時給額を前提として秋田県で東京都と同じ月に10万円以上の所得を得ようとすると、毎月106時間以上拘束されるようになります。
これは、就業する地域によっては現行の5つの社会保険加入条件のひとつに該当してしまう場合とそうでない場合があるということになります。
また、月額8万8000円まで年収換算で106万円という上限と、最低賃金の時間額は整合性が取れていないため、2026年度10月に106万円の賃金要件の撤廃が予定されているという。
しかし、最低賃金の時間額を引き上げても税率は上がりつづけ、物価は高騰していく一方なのに、賃金要件の上限を引き上げるという方向では一切議論されないのが、とても奇妙だ。
労働者は首都圏へ、事業者は地方へ
所定労働20時間がなぜ残るのか
2027年10月には企業規模の条件が撤廃され、2029年10月には個人の事業所であっても5人以上の従業員数を対象に、事業所の従業員数条件も撤廃される見込みとされています。
これは、事実上の社会保険の皆保険制度を2030年までにおおむね完成させたい目論みでしょう。
2030年問題としては生産労働人口は全人口の半分程度まで落ち込み、年金受給開始年齢である65歳以上の高齢者は人口の3分の1にまで推移されることがほぼ確実視されています。
労働需要は7,073万人に対し労働供給は6,429万人と見込まれ、644万人労働供給不足が予測されています。
年金や医療費を社会保険料で賄うという、加入者が増え続けない限り維持できない矛盾だらけのポンジスキームが、まさに崩壊寸前という状態になっていることを示唆しているのではないでしょうか。
2020年には所得税の基礎控除額が30年ぶりに38万円から48万円に減税されたように見えますが、給与所得控除が実質的に10万下がっており実質的な控除額が変わっておらず、給与所得者、いわゆるサラリーマンの負担が増えるようなレトリックが使用されています。
また年間103万円の控除で、現在の日本でどれほど「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」を履行できるかには大きな疑念が生じます。
一部では生活保護費水準の所得控除でないことが、そもそもおかしいという声が多数聞かれるのも事実ではないでしょうか。
気になるのが、所定労働20時間だけが残されている理由です。
2024年度の全国平均最低賃金は1,055円となり、一週間あたり20時間、一か月87時間として換算すると、91,785円となり、106万円の壁に半数以上の自治体では該当することになるが、4割前後の自治体では満たさないことになります。
つまり、賃金条件の年間106万円という条件を撤廃することで、全国平均よりも低く最低賃金1,011円以下の自治体でこれまでの月額8万8000円の上限値を稼ぐには、週に20時間以上の労働時間が必要になるという奇妙な仕掛けが含まれています。
これはつまり最低賃金が1,011円以下の自治体では、所得を減らし労働時間を増やすギリギリのラインで働かない限り、社会保険加入が適応されるされるという条件が、週の所定労働時間が20時間以上が残されている理由ではないでしょうか。
社保加入要件を回避するための前提で同じ時間給で同じ仕事をするならば、時給が高い仕事のほうが社保加入要件から見て労働者にとっては圧倒的に有利であり、企業側からすると拘束時間を増やせば不利になる高い時給よりは、安い時給でより長い時間拘束できる最低賃金が低い自治体が有利になる構図です。
所得賃金要件でなく所定労働時間が維持されるのは、雇用創出のリバランスが目的の一つとして含まれているかもしれません。
所得賃金ではなく労働時間を条件にする真意を推察
家事は仕事ではない。第3号被保険者の廃止論
厚生労働省は、会社員や公務員に扶養される配偶者が直接、年金保険料を納めずに基礎年金を受け取れる「第3号被保険者制度」の廃止論を、来年度の法案として国会に提出予定であったことが明らかになりました。
結果的には来年度の国会には提出せず、次回5年後の年金制度の見直し時期に再検討される可能性が高いようです。
この厚生省と日本商工会議所や連合などが将来的な廃止を求めている3号扶養配偶者の廃止論は、実質的に「家事は仕事ではない」という証明議論となっている懸念があります。
また次世代の国力を担う子育てやたいせつな家内業務自体を否定し、労働のみを優先する制度先行の危機的な推進がないように慎重な判断と注意が必要となるでしょう。
会社員が配偶者の保険料負担をする時が来るかも
所得税と社会保険のトレードオフ!?
今回は、社会保険加入要件の事実上の崩壊と106万円の壁が撤廃された理由について推察してみました。
一方、自民党の税調会長と国民民主党の間で所得税控除は123万円での議論が進められており、結果的に基礎控除が178万円まで大幅に増えないかぎり、社会保険への加入要件の撤廃でトレードオフされれば事実上は会社員や公務員への増税推進となります。
結果的に、所得が低い層に対する逆進性の超過累進課税となっており、所得が低い人からさらに手取りが少なくなる仕組みが推し進められているのが、現在の政府と行政が推進している制度設計です。
これらの租税徴税の度重なる推進は、日本政府は江戸時代に日本を逆戻りさせようとしている可能性がとても高いとも推察されます。
逆進超過累進課税はさらに進む
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