2025.06.04 Wed
発信者情報開示命令申立ての方法と手順
発信者情報開示命令申立てについて
今回は、発信者情報開示命令申立ての流れと方法について解説いたします。
発信者情報開示命令申立ては発信者情報の開示制度を定めるプロバイダ責任制限法の改正法が2022年に施行され、これまで何段階にもわたる手続きが必要だった同制度が簡略化され、申立てがしやすくなりました。
非訟事件として裁判所で取り扱われるため訴訟相手が不要で、従来の発信者情報開示請求訴訟よりも、迅速かつ簡単に情報開示がしやすくなりました。
これにより、従来の被害者側が一方的に不利益を被り加害者側が有利な状態が是正されるようになりました。
また名誉毀損や信用毀損は、掲示板のように第三者が閲覧可能な状態でなく、チャットメッセージ内のやり取りであっても侮辱による人格権侵害として民法上の不法行為(民法709条)として訴えることは可能です。
履歴や画面キャプチャーなどをしっかり保存しておくことで、開示命令の要件事実を満たしやすくなりますので、証拠保全はしっかり行うことがおすすめです。
開示命令申立の事前準備
発信者情報開示命令をするためには、まず要件事実を明確にするため、しっかりと準備をすることが大切です。
インターネット上で名誉毀損や誹謗中傷、信用毀損や悪質なデマ、プライバシー侵害や業務妨害を受けた事実を証明する証拠であるスクリーンショットやログファイル保存、URLとHTMLぺージ保存など、権利侵害を証明するために必要な証拠をすべて集める必要があります。
また、非訟事件なので受任事件とは異なり、弁護士に相談する場合も、あくまでも手続きや進め方などの相談ベースとなることが多くなります。
本人申立てで不安な方は専門家に相談することで法的手続きをスムーズに進めることができます。
特に裁判所では要件事実を重要視するため、感情論に流されず冷静に違法行為となる証拠のみを収集することのみが求められます。
この準備段階が発信者情報開示命令申立てで一番重要なフェーズとなり、その後の提出や審理をスムーズに進めるための大切な土台となります。
事前準備でほぼ判決は決まる
開示命令申立書の作成と提出
証拠ドキュメントの準備が整ったら、次は「発信者情報開示命令申立書」の作成に取り掛かります。
この申立書には、受けた被害の詳細や集めた証拠、どのような情報を開示してほしいのかを具体的に書く必要があります。
内容が不十分だと裁判所から指摘を受けたり受理されない可能性があるため、丁寧かつ慎重に作成しましょう。
申立書が完成したら管轄の裁判所に提出します。これで正式な法的手続きが始まります。
提出する際には、以下のものが必要です:
発信者情報開示命令申立ての必要書類
➊申立書(写し含め計2通)
✅ 原本+写し。
裁判所への提出用と相手方送達用。※「申立書」には発信者の特定に必要な情報(投稿日時、URL、発言内容など)を明記
➋証拠(問題の投稿のスクショなど)
✅ 画面キャプチャやログ保存など。
証拠の改変がないように注意。タイムスタンプ付きだとより信頼性が高まる。
証拠のとりまとめ例
- 【証拠1】権利侵害要旨のキャプチャ(赤字補足入り) ←ホチキス止め
- 【証拠2】投稿全メッセージの原文(スクリーンショット) ←ホチキス止め
- 【証拠3】権利侵害箇所の投稿キャプチャ(赤字補足入り) ←ホチキス止め
- 【証拠4】契約内容の抜粋キャプチャ(契約正当性の主張) ←ホチキス止め
- 【証拠5】被疑者の主張を覆す第三者証言キャプチャなど ←ホチキス止め
➌証拠説明書
✅ ➋の証拠に対応した一覧形式で、「証拠の番号」「種類」「説明」を整理。
➍資格証明書(履歴事項全部証明書)
✅ 申立人と相手方(コンテンツプロバイダ)が法人なら両方必要。発行から3ヶ月以内のもの。
➎印紙(1つの請求につき1000円)
✅ 「裁判所の収入印紙」。
基本的に裁判所の窓口(書記官室または隣接の売店)で購入可。郵便局で買ってもOK。
➏レターパックライト(申立書の送達用)
✅ 相手方に申立書を送るため。宛先を空欄のまま提出。
追跡番号を控えておくと安心。
✅ その他に必要になる場合があるもの(裁判所の運用次第)
➐補充書:裁判所から追加説明を求められた場合に出す書類
➑委任状:弁護士が代理人として提出する場合
➒郵券(切手):地方裁判所によっては収入印紙とは別に郵便切手(郵券)を求められる場合があります(窓口で確認が確実)
これらを揃えて、手続きを進めましょう。
誤字脱字チェックと書類漏れだけはダメ絶対
申立て後の裁判所での流れ
発信者情報開示命令の手続き後は申立書が受理された裁判所でどのような流れで審理されるかを理解することが大切です。
まず、申立書をを裁判所に提出したあとに、最初の審理が行われます。
この段階で、裁判所は提出された証拠や主張を詳しく調べ、必要に応じて追加の資料(補充書)を求めることがあります。
審理が終わると、裁判所は複数の裁判官で話し合い、情報を開示する必要があるかどうかを判断します。
このプロセスは、スムーズに進むこともあれば、何度か審理が必要になることもあります。
早ければ数週間で命令決定がでる。
裁判所からの開示命令の取得
裁判所が発信者情報開示命令を出すためには、その投稿が違法であり、その違法性が明らかであると認められる必要があります。
裁判所は、請求者の主張と証拠に基づいて、これらの条件が満たされているかを慎重に判断します。
この過程で、裁判所はさらに証拠を求めることもあります。最終的に裁判所が開示命令を出すと、請求者はプロバイダに対して、裁判所の命令に基づいて発信者の情報を開示するよう求めることができます。
これにより、被害者は発信者を特定し、適切な法的措置を取ることが可能になります。
申立てが認められた場合にはCP(コンテンツプロバイダ)へ開示命令が送付され、IP(インターネットプロバイダ)の開示が必要な場合は、次の段階へ申立てが進みます。
もし申請が通らない場合には、裁判所が「却下」「棄却」などの決定を出す。
却下:形式面の問題で門前払い。書類不備、申立人に資格がないなど
棄却:内容面で請求が認められなかった。権利侵害がない、正当な投稿と判断された場合など
不服がある場合は2週間以内に不服申し立ての即時抗告が可能です。
審理には権利侵害が重要視される
プロバイダへの情報開示命令
裁判所が発信者情報開示命令を受け取り、審理したあとに申立てが認められれば、コンテンツプロバイダに対し情報を開示するよう命令をします。
裁判所が命令を出したら、その命令に基づいて必要な情報を開示する義務があります。
このプロセスには通常、数日から数週間かかることがあります。
審理の進み方や証拠や書類の完成度、裁判所の混み具合など複数の理由により日程は前後します。
コンテンツプロバイダが情報を開示するためには、正確な証拠資料と命令を発行するためのしっかりとした根拠や関連する資料が必要なので、事前に間違いのない証拠や情報を準備しておくことが大切です。
開示命令が執行されると、裁判所から申立人に開示結果の通知と詳細内容を送付されて、発信者情報開示命令申立ての手続きは完了します。
その後は必要に応じて、少額訴訟や損害賠償請求のための民事訴訟を被告に対して提訴していくことになります。
開示命令が決定されると発言者情報が開示される
開示命令決定までに必要な期間
発信者情報開示命令の手続きにかかる時間は、ケースの複雑さや関係者の対応によって異なります。
一般的には非訟事件なので、弁護士に代理人を依頼していても手続きはほぼ同じですが、裁判所への申立てから裁判所の審理、命令の発行、プロバイダへの情報開示請求までの全プロセスで2ヶ月から3ヶ月ぐらいかかることが多いようですが、IP開示が不要であったり証拠類が明確であれば、早ければ数週間程度の審理で開示命令がでる場合もあるようです。
しかし、証拠の検証に時間がかかる場合や補充書が必要になったり、CPからIPまで一緒に開示する場合など状況によっては数ヵ月かかってしまうこともあるかもしれません。
このように、コンテンツプロバイダだけの開示命令で済む場合と複数のインターネットプロバイダの開示命令が必要な場合や、証拠資料の要件事実の証明に審理時間がかかる場合など、申立て内容が複雑であればあるほど期間を要しやすいので、被害を受けた場合は早めに対応を始めることが大切です。
手続きの期間を短縮するためには、法的手続きと申立てに重要要点をしっかりと理解し、証拠書類や申立書に正確な情報を記載し、事前準備をもって進めることが求められます。
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